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古代史を語る

古代史の全てがわかるかもしれない専門ブログ

本当は由緒正しい「二つ折り型スマートフォン」の歴史概説 

余談
DataScope から MUSASHI まで。

 二つ折り型の携帯電話機と言えば、1999年、iモードのサービス開始とともに登場した、と書くと多くの人は納得してしまうかもしれない。しかし実際にはこの形状を採用した機種はそれより前にすでに存在していた。ここで言う「二つ折り型」とは、開いた時に上部に画面、下部に入力・操作系を持つ、縦長の「折りたたみ型」を指す。この形状の携帯電話機は、90年代半ば頃、NEC が「ジュワッキー」シリーズの数機種で採用したのが最初だと思われる。ただしこれは表示するものが電波状態と電話番号くらいしかない時代なので、画面といっても三行分程度の小さいものであり、そのまま後の「二つ折り型」にはつながらない。

 その意味で世界初の「二つ折り型」は、京セラが1996年に発表、翌年 DDI Pocket 向けに発売した「DataScope DS-110」だと思われる。これは IBM の小型コンピュータ「ChipCard」のシステムに PHS を一体化したもので、当時としてはぎょっとするほど大きい画面を持っていた。パソコン通信への接続、PC との予定表などのデータ連係、ネイティブアプリケーションの組み込みが可能で、おそらく日本初のスマートフォンと呼んでよいものだ。後継機ではインターネットに対応し、NTT DoCoMo 向けにも発売された。

 なお、世界初のスマートフォンと謂われるものは IBM が1994年に米国市場向けに発売した「Simon Personal Communicator」で、これは通常の携帯電話機であればダイヤルキーがあるべき場所までが縦長のタッチスクリーンで覆われていた。

 日本では、1999年2月22日、NTT DoCoMo がiモードの提供を開始し、これが流行するのに従って二つ折り型のフィーチャーフォンが浸透する。iモードの内容から求められる表示能力と電話機としての操作性を両立させやすいからだが、この形状自体はすでに DataScope というスマートフォンによって先鞭を付けられていたことは忘れられるべきではない。フィーチャーフォンとは要するに簡易スマートフォンであり、スマートフォン的な使い方をするために要求されたのが二つ折り型なのである。

 同じ頃、北米では、携帯型のコンピュータに電話の機能を一体化したものが一般にスマートフォンと呼ばれ始めていた。1999年に Qualcomm の「pdQ Smartphone」、2000年に Ericsson の「R380」、2001年に Handspring の「Treo 180」などが登場している。

 2002年、Qualcomm の携帯端末事業を買収した Kyocera Wireless は、Palm OS 4.1 を搭載した二つ折り型のスマートフォン「Kyocera 7135」を北米市場に投入した。上部には Palm OS 搭載機としては標準的な正方形のタッチスクリーン、下部にはキーパッドの他に Graffiti 方式の手書き入力に対応したタッチパッドを備えていた。

 早くからスマートフォンを作ってきた現存する老舗として、京セラの他に Motorolaサムスンを挙げられるが、この二社も早い時期に二つ折り型のスマートフォンを発売している。サムスンPalm OS 4.1 を搭載した「SPH-i500」を2002年に発表。

Motorola は、2003年、Microsoft Smartphone 2002 を搭載した「MPx200」を投入した。

 スマートフォンということばが使われ始めた2000年前後から、iPhone が流行する2010年前後までは、様々な形態の製品が試みられた。代表的なものを挙げると、

  • スレート型:最低限のキーしか持たず、多くの操作をタッチスクリーンで行うもの。Handspring の「Treo 180g」、GroupSense PDA の「Xplore G18」など。
  • スライド型:上に一見似ているが、縦か横にスライドしてキーパッドが現れるもの。Danger の「Sidekick」シリーズなど。
  • ベリー型:コロッとした筐体に極小のキーボードを備えるもの。Handspring/PalmOne の「Treo」シリーズや RIM の「Blackberry」シリーズなど。

 ……などがあり、ここに二つ折り型も加えることができるのである。 

 積極的に様々な形態の携帯電話機を開発していた Nokia も2004年に「Nokia 6260」を登場させた。OS は Symbian Series 60 を搭載し、2.1インチの液晶を持つ上部は反転してスレート型のような形態にも変わる。

Nokia は以後数年間に亘り二つ折り型のスマートフォンを投入している。 

 ベリー型で好評を博していた Blackberry シリーズからも、2008年、二つ折り型の製品が登場している。「BlackBerry Pearl Flip 8220」は SureType と呼ばれる独特の文字入力方式を備え、下部のキーパッドはダイヤルキーと QWERTY キーボードを融合させた特殊なものだった。2010年に発売された「Blackberry Style 9670」は寸胴の二つ折り筐体に完全な QWERTY キーボードを装備していた。

 日本のスマートフォン市場は、世界に遅れて、2005年末、ウィルコムがシャープ製の「W-ZERO3 WS003SH」を発売してから少しずつ広がり始め、2008年にソフトバンク向けに投入された Apple の「iPhone 3G」、NTT docomo が2009年に登場させた HTC 製の「HT-03A」、2010年の Sony Ericsson製「Xperia SO-01B」を経てようやく盛り上がりを見せた。

 2011年、ソフトバンクはシャープ製の「AQUOS PHONE HYBRID 007SH」を発売。Android 2.3 を搭載し、Nokia 6260 のような反転液晶でスレート型に変形した。
 

 この頃になるとスレート型の流行に押されて他の形態のスマートフォンはほとんど見られなくなるが、二つ折り型だけはしぶとく生き残っている。 

 サムスンは2010年、「W899」を中国市場向けに発表。上部の裏表両面に液晶画面を備え、閉じることでスレート型に変わる。この線はシリーズ化され現在までに毎年新機種が発売されている。中国では複数のメーカーが同様の形態を持つスマートフォンを発売しており、一定の人気があることが分かる。 

 LG も2014年、「Wine Smart」を発表し韓国や台湾の市場に投入。日本でも2015年、 J:COMMVNO 事業の専売として登場した。純粋な二つ折り型で、Android 4.4 を搭載した。

LG は以後数機種を続けて発売している。

 Lenovo も2015年、Android 4.4 を搭載した「A588t」を発売。上部はグルリと回転してキーパッド側の背面に付き、スレート型に変わる。
 

 2016年、FREETEL ブランドの SIM ロックフリー製品と MVNO 事業を展開するプラスワン・マーケティングは「FREETEL MUSASHI」を発売。Android 5.1 を搭載し、両面液晶を備えスレート型に変形する。

 ここに挙げたものは代表的な機種だけだが、二つ折り型のスマートフォンは、1997年に発売された DataScope 以来、2016年の MUSASHI に至るまで、常に世界のどこかの市場に登場し続けている。それは主流になったことはないとはいえ、無視のできないスマートフォンの典型的形態の一つだと言われなければならないだろう。

 今回は古代史を一回休みとし、スマートフォンの歴史について述べた。現在の流行を創った iPhone シリーズも初登場からすでに10年近くを経過し、そろそろ次の世代への模索も必要とされるだろう中で、二つ折り型という形態にもまた光が当たることを期待したい。